論文のテーマを提示したのに、テーマから逸れてしまう人がいる。「…さておいて」、と話を変えて、自分の知っている事柄を書き始めてしまう人がいる。これは少数事例ではなく、四人に一人位。折角、専門分野の筆記及び面接試験で良い点数を取っておきながら、もったいない話である。別に現場での専門的な経験が必要な訳ではなく、一般的な知識があれば、答えられるものなのに…
何故こんなことが起きるのだろうか。
専門的な知識の乏しさがあるのかもしれない。しかし、それが大きな要因ではなく、知識を運用するための知識が欠如していたり、知識と知識とを関連づける事が出来ない感じである。つまり、知識の身につけ方に問題がある。単に知識を寄せ集めているだけなのだ。これでは文章化するのには支障を来しても当然と言うものだ。
試験官には色々な採点基準があるのでしょうが、論文では何でも書けば良いものではないと考えています。提示された枠組み(テーマ)の中で力を発揮するのが最低限のルールというものではないでしょうか。何とか合格したいと言う気持ちも分かりますが、気持ちが強過ぎると逆効果と言うこともあります。
この精神科医は、実は有名な精神科医。数冊ほど専門書を執筆し、良い仕事をしているので、専門家の中でも人気が高いですし、患者さんからの人気も高い。見かけはダサダサですが、精神科医としてのセンスは光っています。
しかし、この精神科医は、患者さんには過度に優しいのですが、保健婦や相談員を怒鳴り散らします。その為、公の機関で眺めている知り合いの精神科医たちは、この状態を、バランスが悪くて普通じゃない、如何してスタッフにも優しく接することが出来ないのか、と感じていたそうです。また、この精神科医に怒鳴られる保健婦や相談員は、才能は認めながらも直ぐに怒る精神科医として、認識していました。
公の機関では、ちょっと指導的な立場を取り過ぎてしまったのでしょうか???
こんな感じで舞台裏が見えてしまうと、少々イメージが狂ってしまいます。患者さんの評判が良い先生が、実はスタッフの評判が良くないなんて事も多々あります。舞台裏を見てしまうと、医療に掛かり難くなってしまう感じです。自分の勤める医療機関で治療を受けようと思う職員、って舞台裏を知り過ぎているので、案外少ないと聞きます。
勤務先の医療機関では、外来診察代は免除なので、風邪の時等は診察を受ける職員は多いです。しかし、風邪より重い病気の場合は、余所の医療機関を受診する人が大半です。ただ、余所に行くと看護師さんから、ウチなんかより良い医療機関に勤めているのに如何してウチなんかに受診されたんですか、等と言われます。
本当の所は、どこも似たレベルなんでしょうね。
昔々そのまた昔、或る精神科の病院に精神薬を大量処方する先生がいました。この先生の薬の処方は半端ではなく、朝食後20錠、昼食後20錠、夕食後20錠、眠前に10錠、と言った具合でした。それでも、患者さんの多くは、「これで病気が治るのなら」と必死に飲んでいました。
或る日、この先生が辞め、新しく先生が来ました。新しい先生は、尋常でない薬の量に腰を抜かし、「これでは副作用が出た時、どの薬のせいか分からない。それならわしが皆の為に薬を減らしてやろう」と言い、不必要な薬を抜きました。
すると如何でしょう。患者さんの様子が変わってきました。みるみる変化です。「薬が減ったら、病気が悪くなっちゃう。元に戻して…」と訴えました。更に、「ヤブ医者に掛かっていたら一生入院させられてしまう」と言う患者まで現れ、患者さんが減薬の不安で一斉に調子を崩し始めたのです。驚いた先生は、必死に「今まで必要のない薬を飲んでいたのですよ」と説明しますが、信じてもらえませんでした。
来る日も来る日も先生は説明をしました。そして、やっと先生の行為が正しかったと信じてもらえたとさ。
それにしても慣れ親しんだ習慣は、それが悪しきモノでもなかなか修正が出来ないのでした。
千客万来のドデカイ表装
入り口を見据える招き猫
もう年齢が年齢なんで引退されたと思うけれど、この先生の部屋にはこんなものが備え付けてあった。何か漫才のネタのようなお話なんですけど、私、しっかり、記憶しています。
当時、患者さんが、これを見たら、営利目的で、薬・検査漬けにされそうで怖いなんて感じるだろうな、ふ、ふ、ふ、そんなことを思って、私、眺めておりました。
これは、実際にもう15年以上前にあったお話である。
この病院には、吸血鬼が棲んでいるんか。患者から、血ばっかり抜いて。吸血鬼に飲ませているんやろ〜。一寸、血の抜き過ぎと違うか。食事では、肉を全く食わせないで、血ばっかり抜かれていては、精神の病気が治る前に身体の病気になってしまう。
殆どの患者さんは言われるがままに採血を受けていたが、この患者さんは違った。その時調子が悪かったこともあり、最もらしく、こう叫んだのだ。
この病院は、法律の範囲内で保険点数を上げるのが巧かったので、採血の回数が多かった。また、入院食は植物性たんぱく質で十分だと言って、肉は殆ど出なくて、豆腐のオンパレードだった。しかし、暗黙の了解事項だったため意義唱えるものは、職員・患者さんの誰一人としていなかった。そんな中での採血や入院治療食に関する批判であった。これを聞いた職員や患者さんは、皆固まっていた。
どうなるか、と思って、眺めていたら、暫く沈黙が続き、笑いが一斉に起こった。誰もが腹の底で思っていたことを、この患者さんが代弁したのだ。ストレートに批判しなかったのが、良かったようだ。ストレートに批判していたら、調子が悪い患者さんと見なされ、…になっていただろうなぁ。
正直言って、事が大きくならなくってホッとしたのを覚えている。暫くの間、この光景が、恰も『裸の王様』の結末のように見えて仕方がなかった。